新着記事

  • 私と評論

    受け答え

    太宰治全集を読み続けている。何が太宰文学を永遠にしたのだろうかと、考えてみた。戦後日本に絶望したことだけではないのかもしれない。科学批判もおもしろい。作者の分身がいることもおもしろい。なかでも今日取り上げたいのは、話の展開と会話だ。どこかで、ある評論家が、太宰がしっかりした骨組みの構成をとることができなかったと指摘していたような気がするが、感性に優れた作家は、やはり話のオチだけではなく、軽妙な会話...

    2023年11月20日

    中西 哲也

  • 人生

    生きる動機

    太宰治の作品、とくに後期は、自己と他者の認識と乖離がはっきりと書かれていた。彼とその作品を取り扱うにあたって、学者のような「客観的」な書き方をしてしまうと、結局、他人事のような印象を与えてしまう。戦後日本をどう見るかについては、評者の経験や見識によるので、とやかく言うことではない。それでも、太宰の問いにどう答えるかが、私個人として、きわめて重要なのだ。飯を食って、ぐうすか寝て、休日レジャーに行く。...

    2023年11月6日

    中西 哲也

  • 私と評論

    構造と実存

    昔、国際政治の本を読んでいるときに、「構造」という用語を学んだことがある。かなり粗い説明になるが、その本によれば、確か、その定義は「諸要素とその関係」というものであった。たとえば、ある出来事や事件が起こった際に、いくつかの要素というか、原因の候補を挙げてみる。基本的には、その原因がどのくらいまで結果に対して影響を持っていたのかについて、詳しく検討していくことになる。ここで注意すべきは、原因は必ずし...

    2023年10月12日

    中西 哲也

  • ふりかえる

    縁を切る

    私は、将来、知人や親戚筋とは、完全に縁を切ろうと思っている。今でも切りたいのだが、親や姉弟がいるから、なんとか一般社会の中で生きることができている。役に立つとか立たないのレベルではない。言葉にはできない。悲しくなる。冒頭の様な発言をせざるをえないこと自体が、良くも悪しくも、私の「人間性」をあらわしているのかもしれない。生死の狭間に立った経験がある。常識人からすれば、頭がおかしいのだろう。しかし、「...

    2023年9月25日

    中西 哲也

  • 人生

    お金のこと

    恥ずかしながらなのですが、今更ながら、当たり前のことに気づきました。自分の家のメンテナンスを、DIYでしようが、田畑で野菜を育てようが、自分のためなのであって、金銭を稼ぐことにはなっていない。しかし、楽しい。収入として得ているのは、もっぱら「教育」関連であって、他人のために、ということが優先されている。ストレスがたまるし、本来進んでやりたくないような類のものだ。ほとんど貯金はないし、奨学金の返済は...

    2023年9月21日

    中西 哲也

  • 「無」

    価値観の違い

    阪神タイガースが優勝したらしい。父がファンなので、機嫌良くなってくれたら、いいのではないかと思う。祝っている最中に、大変恐縮なのだが、あのいわゆる「虎吉」さんたちは、どうしてあそこまで熱くなれるのだろうと、小さい頃から思ってきた。同じように、同年代の妻子持ちが、どうしてあそこまで、レジャーに熱を入れることができるのだろうと思っている。あそこまで「生きがい」にできるものが見つかれば、「生きる意味」な...

    2023年9月14日

    中西 哲也

  • 教育

    研究者と教育者

    私は、かつて「若手研究者」と呼ばれた立場だったのだが、ただ感覚的に、おのれの経験を踏まえた文章を書きたかっただけだった。そのため、どうしても教壇に立つというイメージが思い浮かばなかったため、現在に至るまで「教育」にはなじめていない。ただ安心しているのは、今「研究者」ではなくなったということだ。それは、私のいわゆるこれまでの放浪の道に違わず、外部から追い出されるという形に近かったのだが。それはともか...

    2023年8月27日

    中西 哲也

  • 私と評論

    捨てる

    私事になるが、明日部屋を整理して、多数の本を捨てようと思う。昨年度捨てたときには、付箋を付けたところを見返すという作業を行ったように記憶している。今回は、今の私に不必要になった理由が頭に漠然と浮かんだので、処分を決定した。「政治」関連の書籍に関しては、最後まで、マックス・ウェーバーやホッブズが気になっていた。ウェーバーは精神を病んでいたようだし、歴史研究をしているので、やはり残しておきたい笑しかし...

    2023年8月16日

    中西 哲也

  • 私と評論

    生活と芸術

    太宰は、小説を書いて生きていくと決めていたようだ。だから、「斜陽」がベストセラーになったあたりまでは、かなり生活が苦しかったというような話を聞いた。「走れメロス」みたいな物語を書いていながら、友人をだまして、お金を借りたまま返さないといった逸話も聞いたことがある。ちなみに、小林秀雄も、父が亡くなって、生活してゆく必要から、文章を雑誌に載せたというような話だった。いずれにしても、読んでくれるだけの読...

    2023年8月15日

    中西 哲也

  • 私と評論

    自意識と自然

    太宰治は、記憶の限りでは、「津軽」などの作品で、故郷の自然について描写していた。津軽の自然は、容易に人間を寄せ付けないというようなことを書いていたように思う。詳しい解釈はできないし、する気もないが、彼にとって「自然」と出会うことが、大きな問題になっていたことは理解できる。罪深さを抱えた者がかろうじて生きてゆくためには、自然のなかで包まれるしか方法はなかったのだろう。戦後東京に戻って死を遂げるまで、...

    2023年8月15日

    中西 哲也

  • ふりかえる

    自分で自分を褒める

    私は、褒められてうれしかった経験を、思い出すことが、できない。否、必死に消そうとしている。なぜか。精神病院に入っていたときに、褒められて、逆に怒りを覚えたからだ。病院側は、善意なのか、マニュアル的なのか、分からないが、前向きな言葉をかけてくれるのだ。実は、教える仕事をするときには、私も真似している。「普通の人」は、非常に喜んでくれるからだ。申し訳ないが、私は、強制入院させられて、内心では、病院を破...

    2023年8月13日

    中西 哲也

  • 私と評論

    知識と経験

    太宰治の理想が、戦後理想郷を語っていたそうだ。フランスのモラリストを基調とし、自給自足の生活をするというような類であったような気がする。私は今、趣味で田畑を耕しているが、そのきっかけは、知識の偏りすぎていたことに対する反動もある。中学生や高校生だった頃、借りている畑で、鍬を持って土と向き合っていた。その頃を思い出している。なぜ太宰は自給自足が良いと思ったのだろうか。有名な言葉になっているが、戦後太...

    2023年8月9日

    中西 哲也

  • ふりかえる

    他者批判の資格はあるか

    腹立たしい話なのだが、他の人からモラルの悪さを指摘されたことがある。たしか、「9条の会」が開かれたときに、私が署名しなかったというのが、事の発端だったと思う。私が署名しなかった理由を答えたのだが、そもそもその署名を求める書類を書いた方は、決して強制していなかった。私の言い返し方に問題があったらしく、その後あるおふたりから、ああいう言い方は良くないというような、上から目線で、おしかりを受けたのだ。し...

    2023年7月21日

    中西 哲也

  • 教育

    学びの意義

    私は、学んだことによって、他者を知り、また自己をも知ることができるようになりつつある気がする。別にコミュニケーション能力が高いというような類いではない。どういう人なのかが、読み取れるようになったのだ。申し訳のないことを言うが、やはり社会に出てから、読書していない人は、すぐに分かるのだ。指示を受けないと、何をすれば分からず、行動や発言も深い洞察力に裏付けられていない。一番嫌なのが、個々人に才能がある...

    2023年7月19日

    中西 哲也

  • 教育

    なんて奴等だ

    最近思ったのだが、まじめなタイトルを書籍につけてしまったもんだ。おそらく、自分が積み上げてきた、研究のスタイルから、まだ離れることが完全には出来ていなかったのだろう。しかし、「知識」から決別するきっかけになったことだけは、間違いない。売れなかろうが、前に進むためには必要だったのだ。そんな自分中心的な文章だから、たしかに、他者から共感されることは難しいだろう。言いたいことがあっただけなのだ。今後どこ...

    2023年7月4日

    中西 哲也

  • 文体

    作家との共感

    人間社会で、同じ想いを共有できる人なんていないように思えてきたこの頃。高橋源一郎の「戦争」に関する本を読んでみた。高橋さんは、昔吉本隆明に「現代の太宰治」と呼ばれていたが、正直、ラジオ番組の語りを聞いても、別に感銘は受けない。しかし、書籍の中には、思ったより参考になる話があった。正確な話ではないが、戦前に朝鮮半島で生まれた作家が、幼い頃の記憶を思い出そうとするという内容であったと思う。おのれの記憶...

    2023年6月19日

    中西 哲也

  • 人生

    いかに生くべきか

    いきなり暗い話で恐縮だが、統合失調症と診断された頃は、いまにも死にそうだった。どのように死ぬかが問題であった。今は、どのように生きてゆくかが、大問題になった。あまりにも漠然としているので、具体的に考えてみた。学習塾を大きくするという案。どう考えても、大手予備校に正社員で働いても、個人的な性格上、怠けようとするだろう。割に合わないからだ。しかし、自分が運営に関与するような環境であれば、積極的に動いて...

    2023年6月2日

    中西 哲也

  • 日本的なるもの

    自然と出会う

    太宰治の「津軽」を読んだ。太宰の帰郷は、10年ぶりくらいだったそうだ。実は、読み始めたときは、いっこうにおもしろくなく、あまり気乗りしなかった。津軽の文句なのではないが、地域のことを詳しく知ろうとしているわけではないからだ。しかし、たしか太宰自身が最初あたりで書いていたように記憶しているが、彼は「愛」について探究しようとしていた。その言葉を信じて最後まで読んでみた。太宰が故郷について書こうとしたの...

    2023年5月28日

    中西 哲也

  • 太宰治

    妻から見た夫

    太宰治の再婚相手が、太宰について回想した著書を読み終えた。身近にいた人間が、「作家」太宰の「実生活」を詳細に語っている点で、非常に貴重であった。妻だけというより、他の人も妻に同感するかもしれないが、偉大な作家の実生活に関する評価は、かんばしくはない。具体的に言えば、「主観のかたまりのような人」で、「矛盾だらけ」であったそうだ。妻の証言によれば、現実に起こった出来事は、太宰の物語とは違っていたそうだ...

    2023年5月16日

    中西 哲也

  • 太宰治

    傑作

    太宰は、自分が生きる意味とは、後期に「傑作」を残すことにあるのだと考えていたふしがある。『晩年』を上梓する前、おそらくは死ぬ気で書いていたのだろう。しかし、彼が語っていたように、どうしてもこの処女創作集では死にきれなくなったようだ。残されている彼の手紙では、「早く死にてえ」というような表現が見られるが、早く傑作を書きたいという叫びであるように聞こえる。それゆえ、「小説」=「遺書」のように映るのは、...

    2023年4月17日

    中西 哲也

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