「承認」について(5)

2019年7月31日

斎藤環の「構図」 前回は、「鏡像」関係の理論における「相互承認」の論理を説明しました。今回は、斎藤環の文献を読み解きながら、斎藤の「構図」を抽出していきます。 まず、「相互承認」の論理は、他者からの承認で自己愛が成立するという前提に依拠しています。ちなみに、「自己愛とは自分という存在を温存していこう、サバイバルしていこうという欲望のこと」です(斎藤環「つながることと認められること」桐光学園+ちくま...

この記事は有料会員限定です。会員の登録をすると続きをお読みいただけます。

関連記事

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(7)

    無意識からひらめく 今回は、第5章「直感――無意識の声を聞く」を検討します。この章の要点は、無意識からひらめきを得るためには、外に「注意」を向けた状態から「内省」へと切り替える必要があるということです(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIGENCE――これからの時代に求められる「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣』大和書房、2018年、106頁...

    2020年4月3日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(6)

    「孤独な内省」という論理 今回は、第4章「孤独――ひとりの時間で考える」を批判的に検討します。この章の要点は、「創造」には「孤独」(Solitude)が必要だということです。その根拠として、「孤独な状態で内省すると」、「自分の心と親密になれる」ので、意味や洞察が得られるという点が挙げられています(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIGENCE――これ...

    2020年3月28日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(5)

    無意識とつながる 今回は、第3章「夢想――自分と深くつながる」を検討します。この章の要点は、「マインド・ワンダリング」は「クリエイティブ思考」に欠かせない、ということです(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIGENCE――これからの時代に求められる「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣』大和書房、2018年、54、56頁)。その根拠は、「マインド...

    2020年3月21日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(4)

    「本当の自分」に出会う 今回は、「第2章 情熱――何かに夢中になる」を、批判的に検討します。この章の要点は、「情熱」を持っている人は「クリエイティブ思考」になれるということです。その根拠は、情熱を持っている人は「内」から出発できるという点にあります。また、情熱だけでは「クリエイティブ思考」になるには不十分で、努力も必要とのことです。 最初に、「クリエイティブ思考」の人々の特徴として、「情熱」(Pa...

    2020年3月15日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(3)

    遊びと創造 今回からは、これまでに抽出した『FUTURE INTELLIGENCE』の全体像を踏まえて、各章を読み解いていきます。 結論から言えば、第1章の要点は、「遊びがクリエイティブ思考を養う」ということです。そして、その根拠は、子どもたちが「遊びを通して自分自身のことや、まわりの環境と自分との関係を理解しようとしている」からです(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUT...

    2020年3月9日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(2)

    「知性」について 前回予告した通り、「定義」に関する前回の説明を踏まえて、今回は、シリーズの「課題」を設定します。カウフマンとグレゴワールによれば、「これからの時代に求められる知性」とは、「自らの矛盾や複雑さを受け入れる」ことです。前回は具体的に、その「矛盾」の内容として、「マインド・ワンダリング」と「マインド・フルネス」について説明しました。 改めて、以上の内容を確認しておきましょう。同書によれ...

    2020年3月3日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(1)

    「マインド・ワンダリング」と「マインド・フルネス」 今回のシリーズでは、スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIGENCE――これからの時代に求められる「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣』(大和書房、2018年)を取り上げます(原題は、Wired to Create: Unraveling the Mysteries of the Creativ...

    2020年2月26日

    中西 哲也

  • 統合失調症

    「狂気」について(13)

    「創造性」の論理とその前提 今回は、シリーズの最終回です。前回は、「内発性」を基調とする「創造性」の論理が、常人の発想と異なる理由について、“直観による内省”という観点から検討しました。今回は、前回の考察を踏まえて、「狂気」を絶対的に感ずるとはどういうことかについて、より詳しく検討します。 前回整理した筆者の「仮説」を簡潔に言えば、「狂気」を絶対的に感ずることによって、「新...

    2020年2月20日

    中西 哲也

  • 統合失調症

    「狂気」について(12)

    「分かっているのにやめられない」問題 今回と次回で、これまでの議論を踏まえて、“直観による内省”について整理します。 前回は、「狂気」を「創造性」にまで高める方法について、筆者が実践している方法を紹介しました。その眼目は、「合理性」で抑え込まずに、「内」から出発できるように促すことにあります。また、これは、若い時分に“構造からの自由”を志向していた筆...

    2020年2月14日

    中西 哲也

  • 統合失調症

    「狂気」について(11)

    「狂気」を「創造性」にまで高める方法 筆者の個人的経験を取り上げながら、岩波明が考える、天才を殺さない社会について、具体的に考えてきました。天才を殺さない社会では、教育体制が、「ヒエラルヒー」ではなく「ネットワーク」に移行しているというのが、前回記事の結論です。その理由は、「ヒエラルヒー」よりも「ネットワーク」の方が、生徒が「内」から出発しやすいからです。 とはいえ、現場においては、教師と生徒の間...

    2020年2月8日

    中西 哲也

  • 統合失調症

    「狂気」について(10)

    「ヒエラルヒー」と「ネットワーク」 今回も、前回に引き続き、岩波明の議論の検討を踏まえて、筆者の個人的経験を取り上げます。前回の考察に従えば、「画一的教育」の背景には、「ヒエラルヒー」構造の教育体制があります。「ヒエラルヒー」構造では上意下達がなされるので、構造の下部に位置する生徒は、自分の「内」から出発しにくくなります。 結論から言えば、今回の記事の目的は、前回考察した「ヒエラルヒー」構造に代わ...

    2020年2月1日

    中西 哲也

  • 統合失調症

    「狂気」について(9)

    抵抗の論理 前回は、筆者の中学時代の“読書感想文事件”について、説明を始めました。諸事情より、読書感想文を提出しようとしない筆者に対して、教師は提出が必須だと迫りました。ところが、別稿にて触れますが、家庭教師をしていた時に、地元では読書感想文が「選択制」に変更されていることを知りました。そのため、どうして昔の画一的な教育方針が転換されたのかについて、筆者なりに考えてみたいと...

    2020年1月23日

    中西 哲也

  • 統合失調症

    「狂気」について(8)

    「画一的教育」の弊害について 前回は、岩波明の提言の“前提”を検討して、筆者の考えの妥当性を証明しました。要は、画一的な教育が天才を殺すという指摘には、そうした教育が「内」からの流れを止めてしまうことの問題性を明らかにするという狙いがあるのです。そこで今回からは、個人的な経験を取り上げて、「画一的教育」とその弊害とはどのようなものかについて考えます。 さて、筆者は自分自身で...

    2020年1月16日

    中西 哲也

  • 統合失調症

    「狂気」について(7)

    天才を殺さない社会とは 前回は、岩波明の仮説と論理の“前提”を抽出することによって、筆者の考えを再確認しました。簡潔に言えば、「外」より自分の「内」に向くことを優先するという“前提”がなければ、疾患が創造性に寄与することはありません。 今回は、筆者の考えをより明確にするために、岩波の提言を検討します。 岩波の提言とは、精神疾患や発達障害の人の中に天才...

    2020年1月9日

    中西 哲也

  • 統合失調症

    「狂気」について(6)

    疾患・障害と「拡散的思考」 前回の最後に、岩波明の仮説と論理を抽出しました。今回は、それらを踏まえて、検証作業に入ります。 改めて、岩波の仮説と論理を確認しておきましょう。仮説とは、疾患や障害の症状が創造性に寄与しうるというものです。そして、この仮説を証明するために、「拡散的思考」という創造性に欠かせない働きが疾患の症状と一致しているという論理が、核心に位置付けられています。 それでは、この&ld...

    2020年1月4日

    中西 哲也

  • 統合失調症

    「狂気」について(5)

    芥川龍之介の場合 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 前回は、夏目漱石の事例を取り上げて、うつ病と創造性の関連性について検討しました。今回は、この関連性について引き続き検討を行うために、芥川龍之介の事例を取り上げます。 さて、「芥川自身にも、母と同じように統合失調症を示唆する精神症状がみられて」いました(岩波明『天才と発達障害』文春新書、2019年、177頁)。 しか...

    2020年1月1日

    中西 哲也

  • 統合失調症

    「狂気」について(4)

    「うつ病」と「創造性」の関連性 前回は、岩波明の論理に従って、区別されるべきであるにもかかわらず、①ASD(自閉症スペクトラム障害)と統合失調症が混同されていた点について論じました。管見の限り、岩波はこの点を証明することによって、統合失調症と創造性の関連性が過大に評価されていたことを証明しようとしています。 すでに言及した通り、今回は、②うつ病と統合失調症の混同(類似性)について論じます。その狙い...

    2019年12月20日

    中西 哲也

  • 統合失調症

    「狂気」について(3)

    「統合失調症」と「創造性」の関連性の再検討 前回述べたように、従来の研究では、「統合失調症」と「創造性」は密接に関連していると指摘されていました。今回は、岩波明の考察も参考にしながら、この関連性を正確に評価するために、他の障害や疾患の影響についても検討してみましょう。 岩波によれば、従来考えられていたよりも、実際には、ASD(自閉症スペクトラム障害)とうつ病の影響が大きいようです。つまり、これまで...

    2019年12月15日

    中西 哲也

  • 統合失調症

    「狂気」について(2)

    「統合失調症」と「狂気」 今回は、前回の「マインド・ワンダリング」に関する検討を踏まえて、「統合失調症」と「狂気」について考えます。この点について考える必要があるのは、以下の2つの理由があるからです。 第1に、〈直感と論理〉編にて、「感情」に基づいて「教養」にまで高めるという論理を提示しました。確認すべきは、この論理が、「マインド・ワンダリング」の状態と同じだということです。実際、この「拡散的思考...

    2019年12月11日

    中西 哲也

  • 統合失調症

    「狂気」について(1)

    「マインド・ワンダリング」 岩波明『天才と発達障害』(文春新書、2019年)を手がかりとして、内面の「狂気」を創造性にまで高める方法について考えます。 同書は、「天才や傑出した異能を持つ人々について、さまざまな側面から検討を加えたもの」です。「彼らの人生の軌跡をたどり、周囲の人々や社会との関係を探るとともに、発達障害や精神疾患の視点から論じた結果について述べて」います(同、8頁)。 同書の中心的概...

    2019年12月9日

    中西 哲也

  • パラドックス

    直感と論理(16)

    「『内省』の力と大学教育の意義」編との関係 今回は、〈直感と論理〉編の最終回になります。前回は、「内省」と「価値判断」の意義を確認した上で、自分の「狂気」に気づくことによって「理性」的行為をなしうるという論理を提示しました。今回は、これまでのシリーズの内容も振り返りながら、「狂気」と「理性」を結び付けるという論理を模索します。 前回筆者が自身の闘病体験に基づいて提示した論理では、自分の「狂気」に気...

    2019年12月3日

    中西 哲也

  • パラドックス

    直感と論理(15)

    「内省」では「価値判断」を下さないのか 今回は、「内」から「外」という論理の貫徹における、「内省」と「価値判断」の意義を確認することによって、次回の最終回の課題を明らかにします。 前回は、東京大学の「後期教養教育」を批判的に検討しました。批判の要点は、東大が「感情」に基づいて体系的な「知」にまで高めることを目指しているにもかかわらず、「価値判断」から逃避しているということです。すなわち、最善で最適...

    2019年11月30日

    中西 哲也

  • パラドックス

    直感と論理(14)

    東大式「後期教養教育」の論理 今回は、前回の検討を踏まえて、東大式「後期教養教育」を批判的に検討します。はじめに、再度「後期教養教育」の論理を整理します。『大人になるためのリベラルアーツ』の論理は、次のように整理することができます。 専門化 → 相対化 → 自己の変容 → 社会との健全な関係 前回指摘した通り、「後期教養教育」では「相対化」という方法が用いられますが、...

    2019年11月24日

    中西 哲也

  • パラドックス

    直感と論理(13)

    東大式「後期教養教育」とは何か 〈直感と論理3〉で説明したように、石井洋二郎・藤垣裕子『大人になるためのリベラルアーツ』(東京大学出版会、2016年)では、“感情に基づいて教養にまで高める”という論理が強調されていました。今回は、同書で提唱されている、東京大学の「後期教養教育」について検討します。 すでに〈「内省」の力と大学教育の意義〉編で検討したように、情緒(内)と知識(...

    2019年11月20日

    中西 哲也

  • パラドックス

    直感と論理(12)

    「合理的」と「理性的」 今回は、前回の議論を整理した上で、「価値判断」の意義を指摘します。 「合理的」とは、コスト(費用)とベネフィット(便益)を比較考量して、最適な手段を選択できることです。筆者は、パイロットになるという目標を定めた後に、具体的な手段として航空大学校や自社養成の道を考えました。そして、物理や数学の問題を効率的に解く方法についても考えました。 ただ、“直感に基づいて計算...

    2019年11月15日

    中西 哲也

  • パラドックス

    直感と論理(11)

    パイロット志望だった頃 今回は、筆者自身の仕事の選択にまつわる経験をお話しします。その理由は、自分の歴史を振り返ることが、“直感に基づいて計算する”という論理を推し進めてくれるからです。 ジョブズに関しては、スタンフォード大学での演説や彼の発言に関する考察を通じて、彼の創造性の源泉を突き止めるように努めてきました。その考察から明らかになったことは、「直感」をきちんと「内省」...

    2019年11月9日

    中西 哲也

  • パラドックス

    直感と論理(10)

    利益よりも製品重視 前回は、ジョブズが「直感」を重視していたことを明らかにしました。今回は、「直感」だけでなく、ジョブズがその「直感」を相対化(内省)する作業も行っていたことについて述べます。 ジョブズによれば、「原動力は製品であって、利益じゃない」(アイザックソン『ジョブズⅡ』、467頁)。ところが、「これをひっくり返して、金儲けを目的にしてしまった」ら、「すべてを変えてしまうんだ――誰を雇うか...

    2019年10月31日

    中西 哲也

  • パラドックス

    直感と論理(9)

    テクノロジーとリベラルアーツの交差点 今回と次回の2回にわたって、ウォルター・アイザックソン『スティーブ・ジョブズ』(講談社、2012年)を参考にしながら、ジョブズの創造性の源泉について学びます。まず、再びジョブズを取り上げる理由について説明します。 結論から言えば、その理由はジョブズが、「新自由主義」の全盛期にありながら、自分の「内」から「外」という論理を貫徹することができた人物だからです。 前...

    2019年10月31日

    中西 哲也

  • パラドックス

    直感と論理(8)

    「マネー資本主義」と英米型思考の再検討 『学ぶということ』の中から、池上彰と美馬達哉、そして鹿島茂の論考を検討しました。全員が「直感」と「計算」について触れていましたが、“直感に基づいて計算を行う”ために「内省」を行うという考えではありませんでした。彼らの論考では、「直感」と「計算」が対立的に捉えられています。 今回は、これまでの批判的検討と筆者の問題関心を踏まえて、どのよ...

    2019年10月26日

    中西 哲也

  • パラドックス

    直感と論理(7)

    鹿島の議論の核心 今回は、前回の鹿島茂の議論を再整理した上で、批判的検討を行います(鹿島茂「考える方法」桐光学園+ちくまプリマー新書編集部・編『続・中学生からの大学講義1 学ぶということ』筑摩書房、2018年)。 鹿島茂の構図は、野依良治のそれと同じく、個人と社会の関係でした。野依は「無知の知」に触れていましたが、鹿島がどのような論理で、個人と社会の関係を説明しているのかについて確認しておきましょ...

    2019年10月20日

    中西 哲也