直感と論理(10)

2019年10月31日

利益よりも製品重視 前回は、ジョブズが「直感」を重視していたことを明らかにしました。今回は、「直感」だけでなく、ジョブズがその「直感」を相対化(内省)する作業も行っていたことについて述べます。 ジョブズによれば、「原動力は製品であって、利益じゃない」(アイザックソン『ジョブズⅡ』、467頁)。ところが、「これをひっくり返して、金儲けを目的にしてしまった」ら、「すべてを変えてしまうんだ――誰を雇うか...

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    中西 哲也

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    「狂気」を「創造性」にまで高める方法 筆者の個人的経験を取り上げながら、岩波明が考える、天才を殺さない社会について、具体的に考えてきました。天才を殺さない社会では、教育体制が、「ヒエラルヒー」ではなく「ネットワーク」に移行しているというのが、前回記事の結論です。その理由は、「ヒエラルヒー」よりも「ネットワーク」の方が、生徒が「内」から出発しやすいからです。 とはいえ、現場においては、教師と生徒の間...

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    中西 哲也

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    「ヒエラルヒー」と「ネットワーク」 今回も、前回に引き続き、岩波明の議論の検討を踏まえて、筆者の個人的経験を取り上げます。前回の考察に従えば、「画一的教育」の背景には、「ヒエラルヒー」構造の教育体制があります。「ヒエラルヒー」構造では上意下達がなされるので、構造の下部に位置する生徒は、自分の「内」から出発しにくくなります。 結論から言えば、今回の記事の目的は、前回考察した「ヒエラルヒー」構造に代わ...

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    中西 哲也

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    抵抗の論理 前回は、筆者の中学時代の“読書感想文事件”について、説明を始めました。諸事情より、読書感想文を提出しようとしない筆者に対して、教師は提出が必須だと迫りました。ところが、別稿にて触れますが、家庭教師をしていた時に、地元では読書感想文が「選択制」に変更されていることを知りました。そのため、どうして昔の画一的な教育方針が転換されたのかについて、筆者なりに考えてみたいと...

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    「画一的教育」の弊害について 前回は、岩波明の提言の“前提”を検討して、筆者の考えの妥当性を証明しました。要は、画一的な教育が天才を殺すという指摘には、そうした教育が「内」からの流れを止めてしまうことの問題性を明らかにするという狙いがあるのです。そこで今回からは、個人的な経験を取り上げて、「画一的教育」とその弊害とはどのようなものかについて考えます。 さて、筆者は自分自身で...

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    中西 哲也

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    天才を殺さない社会とは 前回は、岩波明の仮説と論理の“前提”を抽出することによって、筆者の考えを再確認しました。簡潔に言えば、「外」より自分の「内」に向くことを優先するという“前提”がなければ、疾患が創造性に寄与することはありません。 今回は、筆者の考えをより明確にするために、岩波の提言を検討します。 岩波の提言とは、精神疾患や発達障害の人の中に天才...

    2020年1月9日

    中西 哲也

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    疾患・障害と「拡散的思考」 前回の最後に、岩波明の仮説と論理を抽出しました。今回は、それらを踏まえて、検証作業に入ります。 改めて、岩波の仮説と論理を確認しておきましょう。仮説とは、疾患や障害の症状が創造性に寄与しうるというものです。そして、この仮説を証明するために、「拡散的思考」という創造性に欠かせない働きが疾患の症状と一致しているという論理が、核心に位置付けられています。 それでは、この&ld...

    2020年1月4日

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    芥川龍之介の場合 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 前回は、夏目漱石の事例を取り上げて、うつ病と創造性の関連性について検討しました。今回は、この関連性について引き続き検討を行うために、芥川龍之介の事例を取り上げます。 さて、「芥川自身にも、母と同じように統合失調症を示唆する精神症状がみられて」いました(岩波明『天才と発達障害』文春新書、2019年、177頁)。 しか...

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    「うつ病」と「創造性」の関連性 前回は、岩波明の論理に従って、区別されるべきであるにもかかわらず、①ASD(自閉症スペクトラム障害)と統合失調症が混同されていた点について論じました。管見の限り、岩波はこの点を証明することによって、統合失調症と創造性の関連性が過大に評価されていたことを証明しようとしています。 すでに言及した通り、今回は、②うつ病と統合失調症の混同(類似性)について論じます。その狙い...

    2019年12月20日

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    「統合失調症」と「創造性」の関連性の再検討 前回述べたように、従来の研究では、「統合失調症」と「創造性」は密接に関連していると指摘されていました。今回は、岩波明の考察も参考にしながら、この関連性を正確に評価するために、他の障害や疾患の影響についても検討してみましょう。 岩波によれば、従来考えられていたよりも、実際には、ASD(自閉症スペクトラム障害)とうつ病の影響が大きいようです。つまり、これまで...

    2019年12月15日

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    「狂気」について(2)

    「統合失調症」と「狂気」 今回は、前回の「マインド・ワンダリング」に関する検討を踏まえて、「統合失調症」と「狂気」について考えます。この点について考える必要があるのは、以下の2つの理由があるからです。 第1に、〈直感と論理〉編にて、「感情」に基づいて「教養」にまで高めるという論理を提示しました。確認すべきは、この論理が、「マインド・ワンダリング」の状態と同じだということです。実際、この「拡散的思考...

    2019年12月11日

    中西 哲也

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    「狂気」について(1)

    「マインド・ワンダリング」 岩波明『天才と発達障害』(文春新書、2019年)を手がかりとして、内面の「狂気」を創造性にまで高める方法について考えます。 同書は、「天才や傑出した異能を持つ人々について、さまざまな側面から検討を加えたもの」です。「彼らの人生の軌跡をたどり、周囲の人々や社会との関係を探るとともに、発達障害や精神疾患の視点から論じた結果について述べて」います(同、8頁)。 同書の中心的概...

    2019年12月9日

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    直感と論理(16)

    「『内省』の力と大学教育の意義」編との関係 今回は、〈直感と論理〉編の最終回になります。前回は、「内省」と「価値判断」の意義を確認した上で、自分の「狂気」に気づくことによって「理性」的行為をなしうるという論理を提示しました。今回は、これまでのシリーズの内容も振り返りながら、「狂気」と「理性」を結び付けるという論理を模索します。 前回筆者が自身の闘病体験に基づいて提示した論理では、自分の「狂気」に気...

    2019年12月3日

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    直感と論理(15)

    「内省」では「価値判断」を下さないのか 今回は、「内」から「外」という論理の貫徹における、「内省」と「価値判断」の意義を確認することによって、次回の最終回の課題を明らかにします。 前回は、東京大学の「後期教養教育」を批判的に検討しました。批判の要点は、東大が「感情」に基づいて体系的な「知」にまで高めることを目指しているにもかかわらず、「価値判断」から逃避しているということです。すなわち、最善で最適...

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    東大式「後期教養教育」の論理 今回は、前回の検討を踏まえて、東大式「後期教養教育」を批判的に検討します。はじめに、再度「後期教養教育」の論理を整理します。『大人になるためのリベラルアーツ』の論理は、次のように整理することができます。 専門化 → 相対化 → 自己の変容 → 社会との健全な関係 前回指摘した通り、「後期教養教育」では「相対化」という方法が用いられますが、...

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    東大式「後期教養教育」とは何か 〈直感と論理3〉で説明したように、石井洋二郎・藤垣裕子『大人になるためのリベラルアーツ』(東京大学出版会、2016年)では、“感情に基づいて教養にまで高める”という論理が強調されていました。今回は、同書で提唱されている、東京大学の「後期教養教育」について検討します。 すでに〈「内省」の力と大学教育の意義〉編で検討したように、情緒(内)と知識(...

    2019年11月20日

    中西 哲也

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    直感と論理(12)

    「合理的」と「理性的」 今回は、前回の議論を整理した上で、「価値判断」の意義を指摘します。 「合理的」とは、コスト(費用)とベネフィット(便益)を比較考量して、最適な手段を選択できることです。筆者は、パイロットになるという目標を定めた後に、具体的な手段として航空大学校や自社養成の道を考えました。そして、物理や数学の問題を効率的に解く方法についても考えました。 ただ、“直感に基づいて計算...

    2019年11月15日

    中西 哲也

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    直感と論理(11)

    パイロット志望だった頃 今回は、筆者自身の仕事の選択にまつわる経験をお話しします。その理由は、自分の歴史を振り返ることが、“直感に基づいて計算する”という論理を推し進めてくれるからです。 ジョブズに関しては、スタンフォード大学での演説や彼の発言に関する考察を通じて、彼の創造性の源泉を突き止めるように努めてきました。その考察から明らかになったことは、「直感」をきちんと「内省」...

    2019年11月9日

    中西 哲也

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    直感と論理(9)

    テクノロジーとリベラルアーツの交差点 今回と次回の2回にわたって、ウォルター・アイザックソン『スティーブ・ジョブズ』(講談社、2012年)を参考にしながら、ジョブズの創造性の源泉について学びます。まず、再びジョブズを取り上げる理由について説明します。 結論から言えば、その理由はジョブズが、「新自由主義」の全盛期にありながら、自分の「内」から「外」という論理を貫徹することができた人物だからです。 前...

    2019年10月31日

    中西 哲也

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    直感と論理(8)

    「マネー資本主義」と英米型思考の再検討 『学ぶということ』の中から、池上彰と美馬達哉、そして鹿島茂の論考を検討しました。全員が「直感」と「計算」について触れていましたが、“直感に基づいて計算を行う”ために「内省」を行うという考えではありませんでした。彼らの論考では、「直感」と「計算」が対立的に捉えられています。 今回は、これまでの批判的検討と筆者の問題関心を踏まえて、どのよ...

    2019年10月26日

    中西 哲也

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    直感と論理(7)

    鹿島の議論の核心 今回は、前回の鹿島茂の議論を再整理した上で、批判的検討を行います(鹿島茂「考える方法」桐光学園+ちくまプリマー新書編集部・編『続・中学生からの大学講義1 学ぶということ』筑摩書房、2018年)。 鹿島茂の構図は、野依良治のそれと同じく、個人と社会の関係でした。野依は「無知の知」に触れていましたが、鹿島がどのような論理で、個人と社会の関係を説明しているのかについて確認しておきましょ...

    2019年10月20日

    中西 哲也

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    直感と論理(6)

    内省による逆説 今回は、『学ぶということ』の中から、鹿島茂「考える方法」を取り上げます(桐光学園+ちくまプリマー新書編集部・編『続・中学生からの大学講義1 学ぶということ』筑摩書房、2018年)。 前回は、「内省」の真の意義は、直感に基づいて計算することを可能にすることだという点を指摘しました。結論から言えば、鹿島も、「内省」について論じているものの、その真の意義を掴むことができていません。 とこ...

    2019年10月12日

    中西 哲也

  • パラドックス

    直感と論理(5)

    直感に基づいて計算する方法 今回は、『学ぶということ』の中から、美馬達哉「リスクで物事を考える」を取り上げます。今回も前回と同じく、“直感に基づいて計算する”という観点から、美馬の論考を批判的に検討します。 『学ぶということ』の中から、内田樹と池上彰の論考についてはすでに触れましたが、直感と論理(計算)の関係についての考察が不十分だという問題点を指摘しました。池上に関して言...

    2019年9月30日

    中西 哲也

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    直感と論理(4)

    『学ぶということ』の構図 今回は、池上彰「学び続ける原動力」を取り上げます(桐光学園+ちくまプリマー新書編集部・編『続・中学生からの大学講義1 学ぶということ』筑摩書房、2018年)。まず、前回までの議論を整理しておきましょう。 内省 → 教養 → 課題探求能力(論理) → 創造性 → 自己変容 前回は、〈直感と論理〉という視角の説明を行いながら、「自分に問...

    2019年9月26日

    中西 哲也

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    直感と論理(3)

    「問う力」とは何か 前回は、野依良治の議論の核心を批判的に検討しました。結局筆者が言いたかったことは、野依は日本の教育の問題点として「問う力」の欠如を指摘していますが、根本的に「自分に問いかける力」を見直すべきではないかということです。 今回は、この「自分に問いかける力」について、〈直感と論理〉という視角を説明しながら、考えていきます。 さて、野依は、「文化」の要素として、「言語」と「科学」以外に...

    2019年9月21日

    中西 哲也

  • パラドックス

    直感と論理(2)

    “パラドックス”について 前回は、野依良治の記事を中心に、日本の教育問題について考えました。今回は、野依の議論の核心を批判的に検討していきます。 前回確認したように、野依の議論の核心は、個人が直感と論理を強化することが、社会全体の利益を増進させるというものでした。この核心に従って、学校が自らの評価基準で、入学者を選抜するべきだという提言を行っていました。 この核心は、論理的...

    2019年9月15日

    中西 哲也

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    直感と論理(1)

    野依良治が本気で怒っている理由 今回のシリーズでは、「問い」を発することについて、〈直感と論理〉という視角から、考えてみたいと思います。 前編では、「承認」をめぐるディレンマについて取り上げました。筆者自身の闘病体験から言えば、自分で自分の存在を承認するべきなのですが、自分の精神状態を疑わなければならないというディレンマがあります。 筆者が記事を書くにあたっては、この内面のディレンマから「問い」を...

    2019年9月9日

    中西 哲也

  • ヒューマン・ディレンマ

    「承認」について(10)

    最終回の課題 今回が、〈斎藤環と承認〉編の最終回になります。前回予告した通り、斎藤(フランクル)の論理の核心に対する批判的検討を通じて、筆者自身の考え方も明らかにしたいと思います。 前回、フランクルの“問いの反転”について詳しく検討しました。簡潔に言えば、人生からの呼びかけがあるからこそ、自分で自分の存在を承認することができるという論理でした。 このように、「内」から「外」...

    2019年8月31日

    中西 哲也

  • ヒューマン・ディレンマ

    「承認」について(9)

    “問い”の反転 前回は、斎藤環のフランクル解釈を確認しました。斎藤によれば、フランクルの「構図」とは、自分の人生や存在を全面的に肯定しておきながら、人生から自分で「意味」を見つける努力をするように鼓舞されるというものでした。 斎藤は、この「構図」が矛盾しているのではないかという問題提起を行っていました。この問題提起は、適切です。なぜならば、フランクルの「構図」は、肯定されて...

    2019年8月25日

    中西 哲也