「狂気」について(10)

2020年2月1日

「ヒエラルヒー」と「ネットワーク」 今回も、前回に引き続き、岩波明の議論の検討を踏まえて、筆者の個人的経験を取り上げます。前回の考察に従えば、「画一的教育」の背景には、「ヒエラルヒー」構造の教育体制があります。「ヒエラルヒー」構造では上意下達がなされるので、構造の下部に位置する生徒は、自分の「内」から出発しにくくなります。 結論から言えば、今回の記事の目的は、前回考察した「ヒエラルヒー」構造に代わ...

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    2020年7月7日

    中西 哲也

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    知識ドネルケバブ・モデル 今回も、前回に引き続いて、今井の構図において、「直観」と「内省」が重要な役割を果たすことについて説明します。結論から言えば、「直観」と「内省」の関係に関する今井の指摘は、“直観による内省”という筆者の仮説に対して、重要な示唆を与えてくれています。 さて、今井が批判の対象とするのが、「知識ドネルケバブ・モデル」です。これは、次のような「知識についての...

    2020年6月29日

    中西 哲也

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    2020年6月24日

    中西 哲也

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    知識のシステムを創る 前回は、“主観的に世界を視る”という今井むつみの論理を検討しました。今回は、第2・3・4章を検討して、次の点を確認します。すなわち、「生きた知識」をつくり上げる上で、「内省」と「直観」が重要な役割を果たす、という点です。 まず、「生きた知識」をつくり上げるという目的を踏まえて、第2章では、知識のシステムを創ることの重要性が強調されています。今井によれば...

    2020年6月20日

    中西 哲也

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    「生きた知識」にするということ 前回は、今井むつみの書籍のエッセンスを確認しました。それは、簡潔に言えば、子どもによる母語の習得過程を検討対象として、「知識=事実の断片」として捉えるのではなく、「生きた知識」――知識が体の一部となること――を目指すというものでした。 今後同書を検討してゆく上で、同書のエッセンスを踏まえて、筆者が意識すべき点があります。それは、精神疾患から“元に戻す&r...

    2020年6月13日

    中西 哲也

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    「直観」について(1)

    意味を推測して、自ら学ぶ 今回のシリーズでは、今井むつみ『学びとは何か――〈探求人〉になるために』(岩波書店、2016年)を取り上げます。シリーズの初回は、筆者の問題関心に基づいて、「はじめに」と「おわりに」を検討します。 まず、筆者の問題関心とは、端的に言えば、次のようになります。精神疾患が「寛解」に向かう過程とは、子どもが母語を学ぶ過程と、ほぼ同じなのではないか。したがって、子どもによる母語の...

    2020年6月6日

    中西 哲也

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    「今」が「自分の内」にあるということ 前回は、筆者の経験を参考にしながら、“直観による内省”を明確にしました。実は、この筆者の考えは、小林秀雄の議論だけでなく、福田恆存の議論もモチーフとしています。シリーズ最終回の今回は、前回の内容を踏まえた上で、福田の議論を検討したいと思います。 さて、前回説明したように、筆者が経験から引き出した結論が、“直観による内省&rd...

    2020年5月28日

    中西 哲也

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    妄想の内容と仕組み 今回は、前回言及した小林秀雄の議論をモチーフにして、“直観による内省”の意義をさらに明確にします。その際に、筆者自身の経験を題材とします。 筆者の経験とは、「統合失調症」の罹患なのですが、次のような幻聴と幻覚が生じていました。それは、簡潔に言えば、“闇の世界”の人間が、筆者の存在を消そうとしているという内容でした。 具体的に言えば...

    2020年5月24日

    中西 哲也

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    おさらい このシリーズでは、まず『FUTURE INTELLIGENCE』の全体の構図を明らかにし、それに対する筆者の批判的観点も明らかにした上で、各章を検討してきました。今回は、筆者の“直観による内省”という考えを明確にするために、改めて同書の要点を振り返ります。 同書によれば、「自らの矛盾」を受け入れることが、「これからの時代に必要とされる知性」です。具体的に、その矛盾...

    2020年5月21日

    中西 哲也

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    人と違う考え方をする 今回は、第10章「異端――アウトサイダーでいる」を、批判的に検討します。この章の要点は、「クリエイティブ思考」の人は、批判を恐れないということです。その根拠は、抵抗に直面しても、自分を貫き通すことによって、独創的なものを生み出すことができるという点にあります。 さて、「おしなべて人は〔中略〕、イノベーションを目標とし、それに価値をおきながらも、新しいアイデアを否定しようとする...

    2020年5月11日

    中西 哲也

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    「クリエイティブ思考」とは何か(12)

    逆境と創造性の「相関関係」 今回は、第9章「逆境――辛い体験で成長する」を、批判的に検討します。この章の要点は、クリエイティブ思考の人は、逆境(adversity)を経験する可能性が高いということです。その根拠は、クリエイティブな人は、苦しみに意味を見い出すことができるという点にあります(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIGENCE――これからの時...

    2020年5月6日

    中西 哲也

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    「クリエイティブ思考」とは何か(11)

    点と点をつなぐ 今回は、第8章「繊細――傷つきながら、深く感動する」を、批判的に検討します。この章の要点は、クリエイティブな人は感受性が高いということです。その根拠は、敏感さ(Sensitivity)によって、経験に意味を見い出すことができ、内面的な成長を遂げうるという点にあります。 以上の論理を踏まえると、次の記述が重要です。「敏感な人は往々にして、他の人が見逃すような些細なことに気づき、他の人...

    2020年4月28日

    中西 哲也

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    「クリエイティブ思考」とは何か(10)

    「マインド・フルネス」から「マインド・ワンダリング」につなぐ 前回検討したように、第7章の核心は、瞑想が「クリエイティブ思考」を高めるという点にあります。その理由は、瞑想によって、「外」だけでなく「内」にも心を向けることが可能になるからです。 さて、同書はこれまでにも、「経験」を重要なキーワードとして説明していましたが、この章では具体的に、次のように「経験」について説明しています。それは、「外界の...

    2020年4月23日

    中西 哲也

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    「クリエイティブ思考」とは何か(9)

    「マインド・フルネス」の定義 今回と次回にわたって、第7章「瞑想――観察し、点と点をつなげる」を、批判的に検討します。この章の要点は、「瞑想は『観察スキル』を養うことによってもクリエイティブ思考を高める」ということです。その根拠は、瞑想によって、自分の「外」だけでなく「内」にも心を向けることが可能になるからです(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIG...

    2020年4月19日

    中西 哲也

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    「クリエイティブ思考」とは何か(8)

    「好奇心」とその意義 今回は、第6章「好奇心――非日常の体験で限界を広げる」を、批判的に検討します。この章の要点は、好奇心(openness to experience)は「クリエイティブ思考」に欠かせないということです。その根拠は、好奇心から非日常的な経験を積むと、「習慣的な思考パターンからの脱却」を実現できるからです(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INT...

    2020年4月11日

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    無意識からひらめく 今回は、第5章「直感――無意識の声を聞く」を検討します。この章の要点は、無意識からひらめきを得るためには、外に「注意」を向けた状態から「内省」へと切り替える必要があるということです(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIGENCE――これからの時代に求められる「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣』大和書房、2018年、106頁...

    2020年4月3日

    中西 哲也

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    「クリエイティブ思考」とは何か(6)

    「孤独な内省」という論理 今回は、第4章「孤独――ひとりの時間で考える」を批判的に検討します。この章の要点は、「創造」には「孤独」(Solitude)が必要だということです。その根拠として、「孤独な状態で内省すると」、「自分の心と親密になれる」ので、意味や洞察が得られるという点が挙げられています(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIGENCE――これ...

    2020年3月28日

    中西 哲也

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    無意識とつながる 今回は、第3章「夢想――自分と深くつながる」を検討します。この章の要点は、「マインド・ワンダリング」は「クリエイティブ思考」に欠かせない、ということです(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIGENCE――これからの時代に求められる「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣』大和書房、2018年、54、56頁)。その根拠は、「マインド...

    2020年3月21日

    中西 哲也

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    「クリエイティブ思考」とは何か(4)

    「本当の自分」に出会う 今回は、「第2章 情熱――何かに夢中になる」を、批判的に検討します。この章の要点は、「情熱」を持っている人は「クリエイティブ思考」になれるということです。その根拠は、情熱を持っている人は「内」から出発できるという点にあります。また、情熱だけでは「クリエイティブ思考」になるには不十分で、努力も必要とのことです。 最初に、「クリエイティブ思考」の人々の特徴として、「情熱」(Pa...

    2020年3月15日

    中西 哲也

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    「クリエイティブ思考」とは何か(3)

    遊びと創造 今回からは、これまでに抽出した『FUTURE INTELLIGENCE』の全体像を踏まえて、各章を読み解いていきます。 結論から言えば、第1章の要点は、「遊びがクリエイティブ思考を養う」ということです。そして、その根拠は、子どもたちが「遊びを通して自分自身のことや、まわりの環境と自分との関係を理解しようとしている」からです(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUT...

    2020年3月9日

    中西 哲也

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    「クリエイティブ思考」とは何か(2)

    「知性」について 前回予告した通り、「定義」に関する前回の説明を踏まえて、今回は、シリーズの「課題」を設定します。カウフマンとグレゴワールによれば、「これからの時代に求められる知性」とは、「自らの矛盾や複雑さを受け入れる」ことです。前回は具体的に、その「矛盾」の内容として、「マインド・ワンダリング」と「マインド・フルネス」について説明しました。 改めて、以上の内容を確認しておきましょう。同書によれ...

    2020年3月3日

    中西 哲也

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    「クリエイティブ思考」とは何か(1)

    「マインド・ワンダリング」と「マインド・フルネス」 今回のシリーズでは、スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIGENCE――これからの時代に求められる「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣』(大和書房、2018年)を取り上げます(原題は、Wired to Create: Unraveling the Mysteries of the Creativ...

    2020年2月26日

    中西 哲也

  • 統合失調症

    「狂気」について(13)

    「創造性」の論理とその前提 今回は、シリーズの最終回です。前回は、「内発性」を基調とする「創造性」の論理が、常人の発想と異なる理由について、“直観による内省”という観点から検討しました。今回は、前回の考察を踏まえて、「狂気」を絶対的に感ずるとはどういうことかについて、より詳しく検討します。 前回整理した筆者の「仮説」を簡潔に言えば、「狂気」を絶対的に感ずることによって、「新...

    2020年2月20日

    中西 哲也

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    「分かっているのにやめられない」問題 今回と次回で、これまでの議論を踏まえて、“直観による内省”について整理します。 前回は、「狂気」を「創造性」にまで高める方法について、筆者が実践している方法を紹介しました。その眼目は、「合理性」で抑え込まずに、「内」から出発できるように促すことにあります。また、これは、若い時分に“構造からの自由”を志向していた筆...

    2020年2月14日

    中西 哲也

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    「狂気」について(11)

    「狂気」を「創造性」にまで高める方法 筆者の個人的経験を取り上げながら、岩波明が考える、天才を殺さない社会について、具体的に考えてきました。天才を殺さない社会では、教育体制が、「ヒエラルヒー」ではなく「ネットワーク」に移行しているというのが、前回記事の結論です。その理由は、「ヒエラルヒー」よりも「ネットワーク」の方が、生徒が「内」から出発しやすいからです。 とはいえ、現場においては、教師と生徒の間...

    2020年2月8日

    中西 哲也

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    抵抗の論理 前回は、筆者の中学時代の“読書感想文事件”について、説明を始めました。諸事情より、読書感想文を提出しようとしない筆者に対して、教師は提出が必須だと迫りました。ところが、別稿にて触れますが、家庭教師をしていた時に、地元では読書感想文が「選択制」に変更されていることを知りました。そのため、どうして昔の画一的な教育方針が転換されたのかについて、筆者なりに考えてみたいと...

    2020年1月23日

    中西 哲也

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    「狂気」について(8)

    「画一的教育」の弊害について 前回は、岩波明の提言の“前提”を検討して、筆者の考えの妥当性を証明しました。要は、画一的な教育が天才を殺すという指摘には、そうした教育が「内」からの流れを止めてしまうことの問題性を明らかにするという狙いがあるのです。そこで今回からは、個人的な経験を取り上げて、「画一的教育」とその弊害とはどのようなものかについて考えます。 さて、筆者は自分自身で...

    2020年1月16日

    中西 哲也

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    「狂気」について(7)

    天才を殺さない社会とは 前回は、岩波明の仮説と論理の“前提”を抽出することによって、筆者の考えを再確認しました。簡潔に言えば、「外」より自分の「内」に向くことを優先するという“前提”がなければ、疾患が創造性に寄与することはありません。 今回は、筆者の考えをより明確にするために、岩波の提言を検討します。 岩波の提言とは、精神疾患や発達障害の人の中に天才...

    2020年1月9日

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    「狂気」について(6)

    疾患・障害と「拡散的思考」 前回の最後に、岩波明の仮説と論理を抽出しました。今回は、それらを踏まえて、検証作業に入ります。 改めて、岩波の仮説と論理を確認しておきましょう。仮説とは、疾患や障害の症状が創造性に寄与しうるというものです。そして、この仮説を証明するために、「拡散的思考」という創造性に欠かせない働きが疾患の症状と一致しているという論理が、核心に位置付けられています。 それでは、この&ld...

    2020年1月4日

    中西 哲也

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    「狂気」について(5)

    芥川龍之介の場合 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 前回は、夏目漱石の事例を取り上げて、うつ病と創造性の関連性について検討しました。今回は、この関連性について引き続き検討を行うために、芥川龍之介の事例を取り上げます。 さて、「芥川自身にも、母と同じように統合失調症を示唆する精神症状がみられて」いました(岩波明『天才と発達障害』文春新書、2019年、177頁)。 しか...

    2020年1月1日

    中西 哲也