「他力」(2)

2020年9月14日

法然の教え 前回は、『人生の目的』の批判的検討に基づいて、五木寛之の思想の根幹に位置する「他力」について検討しました。簡潔に言えば、筆者(中西)の問題意識は、悪を自覚して神仏と向き合うことにも、「意志」(自力)が必要なのではないかということでした。 仏と向き合って悪を自覚する人が救われるのに対して、そうした「意志」を持たない人は救われることがない。だからこそ蓮如は、前回指摘したように、這い上がろう...

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    2020年9月20日

    中西 哲也

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    『人生の目的』の論理 今回から、五木寛之『他力』の検討に入ります。初回は、『人生の目的』の批判的検討を行って、筆者の問題関心を明確にしてから、「他力」とは何かについての説明を行います。 前回明らかにしたように、五木は『人生の目的』において、「他力」の核心を説明していました。簡潔に言えば、その核心とは、仏の側から呼びかけてくれる、というものです。そのためには、おのれの悪を自覚しなければなりません。結...

    2020年9月7日

    中西 哲也

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    「他力」思想 今回は、〈人生の目的〉シリーズの最終回です。最後に、「信仰」について考えてみましょう。五木寛之の考えの根幹には、「他力」思想があります。結論から言えば、おのれの悪と向き合い、神仏を信ずることが重要だということになります。 まず、五木は、次の点を強調します。「悪は私たちすべての人間のひとりひとりに宿っているはずだ。善人と悪人、天使と悪魔、というように、はっきりと二つに分けないのが他力思...

    2020年8月31日

    中西 哲也

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    格差社会とその原因 前回の「肉親」に引き続いて、今回は、「金銭」に関する五木の考えを検討します。結論から言えば、お金は目的ではなく目標にすぎないが、それを軽く見ることはできない、ということです。重要な点は、五木が、「今の自分」と「昔の自分」という2つの立場を踏まえて、この結論を導いていることです。 さて、五木は、格差社会が再びやってくると述べています。「一部の富めるグループはますます富み、大多数は...

    2020年8月24日

    中西 哲也

  • 五木寛之

    人生の目的(3)

    肉親をめぐる両面性 前回は、〈宿命と運命〉を受け入れることで生きつづけること自体の価値を肯定するという、五木寛之の論理を確認しました。なお、五木は、親鸞の〈業縁〉という言葉を、〈宿命と運命〉という言葉に読みかえていました。 さて、前回の記事を踏まえて、今回の記事では、「肉親」に関する五木の考えを検討します。前回の内容に照らすならば、私たちは肉親を選べないので、宿命として受け入れるべきだということに...

    2020年8月17日

    中西 哲也

  • 五木寛之

    人生の目的(2)

    愛を自分の内に感ずる 今回は、「人生の目的」に関する五木寛之の考えと、その考えを支える論理について検討します。筆者(中西)の問題関心は、「創造性」よりも生きつづけること自体に価値を認める考えを、どのように肯定するのかという点にあります。 まず、五木は、次のように述べます。「人は運命にすべて支配され、その星の下でただ川に浮かぶちりのように流されてゆくだけなのか。私はそうは思わない。いや、思いたくない...

    2020年8月12日

    中西 哲也

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    人生の目的(1)

    五木の議論の出発点 今回から、五木寛之の人生論を検討していきたいと思います。具体的には、『人生の目的』『他力』『大河の一滴』を取り上げていきます。 まず、今回は、『人生の目的』の初回として、次の点を検討します。それは、そもそも「人生の目的」について考える理由とは何なのか、という点です。 この点について考える上で、また、五木の人生論を理解する上でも欠かせないのが、次の衝撃的な事件です。 「妻に蒸発さ...

    2020年8月7日

    中西 哲也

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    祖父と沖縄戦 今回は、前回説明した問いを立てた動機について、より詳しく説明します。「創造性」とは異なる“生き方”について考えるきっかけとなったのは、祖父(母方)の“逝き方”について調べたことです。 祖父は筆者が生まれる前に亡くなったので、筆者は祖父と直接話したことはありません。しかし、祖母や母から伝え聞いていた話があります。そうした話の中で筆者が最も...

    2020年7月31日

    中西 哲也

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    ゴッホの告白 今回から、新たな問いを立てて、探究を続けていきます。その問いとは、“人生の目的とは何か”です。 これまで、「創造性」の論理とは、「自分の内」から出発するというもので、それは“直観による内省”によって可能になることを論じてきました。簡潔に言えば、“直観による内省”とは、「狂気」を直視すること、すなわち、「自分の外」...

    2020年7月30日

    中西 哲也

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    小林秀雄のゴッホ論 このシリーズでは、今井むつみ『学びとは何か』を検討してきました。今回は、シリーズの最終回になります。今回は、“主観的に世界を視る”ことによって「生きた知識」を身につけるという今井の構図を、批判的に検討します。 批判的に検討する際に参考とするのが、小林秀雄のゴッホ論です。結論から言えば、小林はゴッホの手紙を考察した結果、次のように述べています。すなわち、「...

    2020年7月20日

    中西 哲也

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    「直観」について(7)

    「天才」とは何か 前回は、「意志の強さ」が「創造」を生む基礎となりうる点を確認しました。今回は、主に終章を検討対象として、「天才」とは何かについて確認した後に、超一流の熟達者になるための方法について考えます。 まず、今井によれば、「天才」とは、次のような人のことを言います。簡潔に言えば、それは、「探究エピステモロジー」と「新しい視点」を持っている人です。 「『天才』と呼ばれる人は、どこまでも探究し...

    2020年7月13日

    中西 哲也

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    「直観」について(6)

    「創造性」とは何か 前回は、「直観」と親和的な「批判的思考」があることを確認しました。今回は、この今井の分析を踏まえて、第7章を検討し、「創造性」や「天才」とは何かについて考えます。筆者の仮説に基づいて課題を設定するならば、「直観」と「批判的思考」を両立させる土台になるものは何かということです。 まず、「創造性」について、今井は次のように述べています。それは、「状況に合わせて自分独自のスタイルで問...

    2020年7月7日

    中西 哲也

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    「直観」について(5)

    知識ドネルケバブ・モデル 今回も、前回に引き続いて、今井の構図において、「直観」と「内省」が重要な役割を果たすことについて説明します。結論から言えば、「直観」と「内省」の関係に関する今井の指摘は、“直観による内省”という筆者の仮説に対して、重要な示唆を与えてくれています。 さて、今井が批判の対象とするのが、「知識ドネルケバブ・モデル」です。これは、次のような「知識についての...

    2020年6月29日

    中西 哲也

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    「直観」について(4)

    自動処理と制御処理 前回は、“主観的に世界を視る”ことによって「生きた知識」を生むという、今井の構図を検討しました。今井の構図に従えば、知識のシステムをつくり上げる上で、「内省」と「直観」が重要な役割を果たします。“直観による内省”という筆者の仮説に照らして、今井の論理を読み解いてゆく上での課題は、「直観」の重要性を強調しながら、「内省」の役割をどの...

    2020年6月24日

    中西 哲也

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    「直観」について(3)

    知識のシステムを創る 前回は、“主観的に世界を視る”という今井むつみの論理を検討しました。今回は、第2・3・4章を検討して、次の点を確認します。すなわち、「生きた知識」をつくり上げる上で、「内省」と「直観」が重要な役割を果たす、という点です。 まず、「生きた知識」をつくり上げるという目的を踏まえて、第2章では、知識のシステムを創ることの重要性が強調されています。今井によれば...

    2020年6月20日

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    「直観」について(2)

    「生きた知識」にするということ 前回は、今井むつみの書籍のエッセンスを確認しました。それは、簡潔に言えば、子どもによる母語の習得過程を検討対象として、「知識=事実の断片」として捉えるのではなく、「生きた知識」――知識が体の一部となること――を目指すというものでした。 今後同書を検討してゆく上で、同書のエッセンスを踏まえて、筆者が意識すべき点があります。それは、精神疾患から“元に戻す&r...

    2020年6月13日

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    「直観」について(1)

    意味を推測して、自ら学ぶ 今回のシリーズでは、今井むつみ『学びとは何か――〈探求人〉になるために』(岩波書店、2016年)を取り上げます。シリーズの初回は、筆者の問題関心に基づいて、「はじめに」と「おわりに」を検討します。 まず、筆者の問題関心とは、端的に言えば、次のようになります。精神疾患が「寛解」に向かう過程とは、子どもが母語を学ぶ過程と、ほぼ同じなのではないか。したがって、子どもによる母語の...

    2020年6月6日

    中西 哲也

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    「クリエイティブ思考」とは何か(16)

    「今」が「自分の内」にあるということ 前回は、筆者の経験を参考にしながら、“直観による内省”を明確にしました。実は、この筆者の考えは、小林秀雄の議論だけでなく、福田恆存の議論もモチーフとしています。シリーズ最終回の今回は、前回の内容を踏まえた上で、福田の議論を検討したいと思います。 さて、前回説明したように、筆者が経験から引き出した結論が、“直観による内省&rd...

    2020年5月28日

    中西 哲也

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    「クリエイティブ思考」とは何か(15)

    妄想の内容と仕組み 今回は、前回言及した小林秀雄の議論をモチーフにして、“直観による内省”の意義をさらに明確にします。その際に、筆者自身の経験を題材とします。 筆者の経験とは、「統合失調症」の罹患なのですが、次のような幻聴と幻覚が生じていました。それは、簡潔に言えば、“闇の世界”の人間が、筆者の存在を消そうとしているという内容でした。 具体的に言えば...

    2020年5月24日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(14)

    おさらい このシリーズでは、まず『FUTURE INTELLIGENCE』の全体の構図を明らかにし、それに対する筆者の批判的観点も明らかにした上で、各章を検討してきました。今回は、筆者の“直観による内省”という考えを明確にするために、改めて同書の要点を振り返ります。 同書によれば、「自らの矛盾」を受け入れることが、「これからの時代に必要とされる知性」です。具体的に、その矛盾...

    2020年5月21日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(13)

    人と違う考え方をする 今回は、第10章「異端――アウトサイダーでいる」を、批判的に検討します。この章の要点は、「クリエイティブ思考」の人は、批判を恐れないということです。その根拠は、抵抗に直面しても、自分を貫き通すことによって、独創的なものを生み出すことができるという点にあります。 さて、「おしなべて人は〔中略〕、イノベーションを目標とし、それに価値をおきながらも、新しいアイデアを否定しようとする...

    2020年5月11日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(12)

    逆境と創造性の「相関関係」 今回は、第9章「逆境――辛い体験で成長する」を、批判的に検討します。この章の要点は、クリエイティブ思考の人は、逆境(adversity)を経験する可能性が高いということです。その根拠は、クリエイティブな人は、苦しみに意味を見い出すことができるという点にあります(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIGENCE――これからの時...

    2020年5月6日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(11)

    点と点をつなぐ 今回は、第8章「繊細――傷つきながら、深く感動する」を、批判的に検討します。この章の要点は、クリエイティブな人は感受性が高いということです。その根拠は、敏感さ(Sensitivity)によって、経験に意味を見い出すことができ、内面的な成長を遂げうるという点にあります。 以上の論理を踏まえると、次の記述が重要です。「敏感な人は往々にして、他の人が見逃すような些細なことに気づき、他の人...

    2020年4月28日

    中西 哲也

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    「クリエイティブ思考」とは何か(10)

    「マインド・フルネス」から「マインド・ワンダリング」につなぐ 前回検討したように、第7章の核心は、瞑想が「クリエイティブ思考」を高めるという点にあります。その理由は、瞑想によって、「外」だけでなく「内」にも心を向けることが可能になるからです。 さて、同書はこれまでにも、「経験」を重要なキーワードとして説明していましたが、この章では具体的に、次のように「経験」について説明しています。それは、「外界の...

    2020年4月23日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(9)

    「マインド・フルネス」の定義 今回と次回にわたって、第7章「瞑想――観察し、点と点をつなげる」を、批判的に検討します。この章の要点は、「瞑想は『観察スキル』を養うことによってもクリエイティブ思考を高める」ということです。その根拠は、瞑想によって、自分の「外」だけでなく「内」にも心を向けることが可能になるからです(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIG...

    2020年4月19日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(8)

    「好奇心」とその意義 今回は、第6章「好奇心――非日常の体験で限界を広げる」を、批判的に検討します。この章の要点は、好奇心(openness to experience)は「クリエイティブ思考」に欠かせないということです。その根拠は、好奇心から非日常的な経験を積むと、「習慣的な思考パターンからの脱却」を実現できるからです(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INT...

    2020年4月11日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(7)

    無意識からひらめく 今回は、第5章「直感――無意識の声を聞く」を検討します。この章の要点は、無意識からひらめきを得るためには、外に「注意」を向けた状態から「内省」へと切り替える必要があるということです(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIGENCE――これからの時代に求められる「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣』大和書房、2018年、106頁...

    2020年4月3日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(6)

    「孤独な内省」という論理 今回は、第4章「孤独――ひとりの時間で考える」を批判的に検討します。この章の要点は、「創造」には「孤独」(Solitude)が必要だということです。その根拠として、「孤独な状態で内省すると」、「自分の心と親密になれる」ので、意味や洞察が得られるという点が挙げられています(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIGENCE――これ...

    2020年3月28日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(5)

    無意識とつながる 今回は、第3章「夢想――自分と深くつながる」を検討します。この章の要点は、「マインド・ワンダリング」は「クリエイティブ思考」に欠かせない、ということです(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール『FUTURE INTELLIGENCE――これからの時代に求められる「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣』大和書房、2018年、54、56頁)。その根拠は、「マインド...

    2020年3月21日

    中西 哲也

  • 知性

    「クリエイティブ思考」とは何か(4)

    「本当の自分」に出会う 今回は、「第2章 情熱――何かに夢中になる」を、批判的に検討します。この章の要点は、「情熱」を持っている人は「クリエイティブ思考」になれるということです。その根拠は、情熱を持っている人は「内」から出発できるという点にあります。また、情熱だけでは「クリエイティブ思考」になるには不十分で、努力も必要とのことです。 最初に、「クリエイティブ思考」の人々の特徴として、「情熱」(Pa...

    2020年3月15日

    中西 哲也