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    齋藤孝『超訳 人間失格』

     今回は、齋藤孝『超訳 人間失格―人はどう生きればいいのか』(アスコム、2020年)を取り上げます。太宰治の名著『人間失格』が、齋藤孝によって丁寧に解説されています。この記事では、同書のあらすじを踏まえながら、重要な論点を整理してみたいと思います。 どの解説書でも指摘されているように、『人間失格』の主人公・大庭葉蔵は、人間の生活を理解できずに、おびえていました。葉蔵は、人間とのつながりを何とかつな...

    2022年9月18日

    中西 哲也

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    『対照・太宰治と聖書』

     今回は、鈴木範久・田中良彦『対照・太宰治と聖書』(聖公会出版、2014年)を取り上げます。とくに「利用にあたって」と「解説」を読んで、太宰治と聖書に関する論点を、私なりに整理しておきます。 まず、太宰がもっとも重視した聖書の言葉は、「己を愛するのと同じように、隣人を愛せ」というものでした。つまり、自己と他者を対等に置くことができるかどうかが、太宰にとって大きな課題なのでした。太宰が自覚していたよ...

    2022年9月5日

    中西 哲也

  • 太宰治

    東郷克美『太宰治の手紙』

     今回は、東郷克美『太宰治の手紙』(大修館書房、2009年)を取り上げます。東郷は、太宰の手紙を検討して、太宰が自殺した理由について述べています。私は、とくに太宰の戦後の手紙に着目して、東郷の考えを紹介したいと思います。 太宰は、戦後「パンドラの匣」という作品で出発しました。これとその後の作品で書かれていた点は、太宰の手紙の内容と一致しています。具体的に言えば、太宰の理想とは、罪を自覚した者たちが...

    2022年8月16日

    中西 哲也

  • 太宰治

    斉藤利彦『作家太宰治の誕生』

     今回は、斉藤利彦『作家太宰治の誕生―「天皇」「帝大」からの解放』(岩波書店、2014年)を取り上げます。斎藤は、日本が太平洋戦争に向かい、そして敗北したという時代背景を踏まえて、太宰治という作家個人の思想を考察しています。 まず、そのような時代背景における特徴は、「家族国家」体制でした。それは、私生活の「家父長制」を基盤として、国家権力の天皇を父として崇めるというものです。とくに太宰の生家は、浄...

    2022年7月4日

    中西 哲也

  • 太宰治

    三谷憲正『太宰文学の研究』

     今回は、三谷憲正『太宰文学の研究』(東京堂出版、1998年)を取り上げます。太宰の『人間失格』が『如是我聞』と並行して書かれたことを踏まえて、志賀直哉批判との関連についても、三谷は説明しています。以下では、三谷の研究を参考にしながら、私なりに、戦後の太宰の動きを整理してみます。 一方で、三谷が経緯を詳細に検討しているように、当初太宰は志賀の文学を、幸せな生活に感謝することを書いた「不滅の文学」と...

    2022年6月16日

    中西 哲也

  • 太宰治

    太宰治の「桃源郷」

     前回は、安藤宏の書籍を取り上げましたが、今回は、安藤の議論を基礎として、太宰治が理想とした「桃源郷」とは何かについて考えます。参考資料は、安藤宏「太宰治と現代―「自己の内なる天皇制」」(『文藝別冊 KAWADE ムック 永遠の太宰治』河出書房新社、2019年)です。 簡潔に言えば、それは、天皇を倫理の儀表に据えて、個人が罪を自覚して、己を愛するように他者を愛するようになることです。この構想の背景...

    2022年6月9日

    中西 哲也

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    安藤宏『太宰治 弱さを演じるということ』

     今回は、安藤宏『太宰治 弱さを演じるということ』(筑摩書房、2002年)を取り上げます。安藤は、奥野健男が指摘した「罪の意識」ではなく、「関係」によって太宰文学を捉えようと試みています。それは、簡潔に言えば、「悲劇の英雄」というよりも、むしろ「関係の悲劇」でした。以下では、この安藤の視角を確認しながら、太宰治の前期・中期・後期を整理していきます。 安藤によれば、太宰の最大の特徴は、他者との間に「...

    2022年6月3日

    中西 哲也

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    福田恆存『芥川龍之介と太宰治』

     今回は、福田恆存『芥川龍之介と太宰治』(講談社、2018年)を取り上げます。検討対象である福田の論考は、太宰治論なのですが、それは太宰本人と同時代に書かれたものです。それでは、福田はどのように太宰をみていたのでしょうか。 まず、以下の事実について確認しておきましょう。福田の最初の論考が発表されたのは、太宰が入水自殺をした1948年6月で、彼の死後に2本目が発表されました。当然ながら、福田の2つの...

    2022年5月15日

    中西 哲也

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    細谷博『太宰治』

     今回は、細谷博『太宰治』(岩波書店、1998年)を取り上げます。太宰治に関しては、このブログですでに考察してきましたが、彼の作品をどのように読むかについて、同書は興味深い視点を提供してくれています。それは、「大人の読み」です。私なりに説明すると、読者が自分の経験に照らして、太宰の作品を読むとき、自己をどのように意識するかということです。 細谷が指摘するように、太宰は、自分の経験を基にして作品を書...

    2022年5月3日

    中西 哲也

  • 太宰治

    加藤典洋『敗戦後論』

     今回は、加藤典洋『敗戦後論』(筑摩書房、2015年)を取り上げます。加藤は、2019年に『太宰と井伏』を刊行していますが、1995年の「敗戦後論」の中で、すでに太宰治について言及していました。それでは、加藤は『太宰と井伏』で、本格的な太宰治論を展開して、太宰が自殺した原因について考える前に、この「敗戦後論」において、どのように太宰を位置づけていたのでしょうか。 簡潔に言えば、『敗戦後論』では、「...

    2022年5月1日

    中西 哲也

  • 太宰治

    坂口安吾『不良少年とキリスト』

     今回は、坂口安吾『不良少年とキリスト』(新潮社、2019年)を取り上げます。太宰治と同じ「無頼派」として知られている作家の坂口は、1948年の時点で、どのように太宰の死を捉えていたのでしょうか。 結論から言えば、坂口は、太宰の死は彼の「虚弱」によるものだと考えています。坂口によれば、その特質は、「フツカヨイ」であって、太宰は「M・C」(マイ・コメディアン)になりきることができないという点にありま...

    2022年4月25日

    中西 哲也

  • 太宰治

    加藤典洋『完本 太宰と井伏』

     今回は、加藤典洋『完本 太宰と井伏―ふたつの戦後』(講談社、2019年)を取り上げます。加藤は、前回取り上げた猪瀬直樹『ピカレスク』に刺激を受けて、同書を書いたそうです。それでは、太宰治の死に関する猪瀬の仮説について、加藤はどのように考えているのでしょうか。 まず、加藤は、『人間失格』について、「ギリギリのところで、正直に語られているようだ」という印象を持っています。この小説では、「はしがき」や...

    2022年4月21日

    中西 哲也