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ヒューマン・ディレンマ 「承認」について(5)
斎藤環の「構図」 前回は、「鏡像」関係の理論における「相互承認」の論理を説明しました。今回は、斎藤環の文献を読み解きながら、斎藤の「構図」を抽出していきます。 まず、「相互承認」の論理は、他者からの承認で自己愛が成立するという前提に依拠しています。ちなみに、「自己愛とは自分という存在を温存していこう、サバイバルしていこうという欲望のこと」です(斎藤環「つながることと認められること」桐光学園+ちくま...
2019年7月31日
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ヒューマン・ディレンマ 「承認」について(4)
川崎殺傷事件の経緯 前回は、「どのように承認を得るのか」という第2の論点について理論的検討を行い、元農水省事務次官が起こした事件の根本原因を指摘しました。今回は、川崎市の殺傷事件を取り上げて、理論的観点から原因の探求を行います。 「ひきこもり」の人たちは、通常「通り魔」事件を起こさないと言われています。前回指摘しましたが、その理由について、土井隆義は次のように述べていました。それは、「ひきこもり」...
2019年7月26日
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ヒューマン・ディレンマ 「承認」について(3)
「共依存」と「鏡像」 前回は、「ひきこもり」当事者が、他者から承認されたいと望みながらもその望みがかなわず、「自己否定」から暴力に訴えるという構図を確認しました。 今回は、「ひきこもり」に関連した2つの事件を読み解く第2の論点として、「どのように承認を得るのか」という点を取り上げて、理論的な解説を付け加えたいと思います。 それは、「共依存」関係ならびに「鏡像」関係の理論です。土井隆義が指摘するよう...
2019年7月22日
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ヒューマン・ディレンマ 「承認」について(2)
誰からの承認か 前回は、精神科医の斎藤環の分析に基づいて、「コミュニケーション」と「承認」という視点から、川崎市の殺傷事件と農林水産省の元事務次官が自分の息子を殺害した事件について説明しました。2件とも、「ひきこもり」が関連しているという報道がなされています。 管見の限り、斎藤が最も主張したいことは、「他者の承認に左右されずに、自分を承認すること」のようです。この主張については、別稿にて詳しく検討...
2019年7月15日
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ヒューマン・ディレンマ 「承認」について(1)
内面のディレンマ これまで、自分の内面を見つめることが創造的行為につながるということを論じてきました。 以前に、藤原正彦の著書『国家と教養』を取り上げましたが、藤原も「内」の重要性を指摘していました。藤原の議論の要点は、筆者なりに解釈すれば、「外」の知識も重要だが、「内」の情緒ともつながらなければ、真の「教養」は培われない、ということです。 たしかに、社会との関係がなければ、内面には見つめるべき対...
2019年7月8日