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五木寛之 「他力」(7)
資本主義の精神 次回に、五木寛之の「他力」思想の論理を抽出するべく、今回は、欧米の宗教との比較を行います。五木によれば、近代社会の発祥地である欧米諸国よりも、むしろ日本の方が、「アイデンティティの崩壊」という近代の問題は深刻です。 まず、五木によれば、近代の知性は、ルサンチマンや情感を切り捨てました。実際、西洋近代は、神から授けられた人間の「理性」を前提としています。西洋文明の根底には、「客観性」...
2020年10月31日
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五木寛之 「他力」(6)
なぜ「絶望」すべきなのか 前回は、近代日本が「アイデンティティ」の問題を抱えている点を、五木寛之が深刻に捉えていることを確認しました。その問題点とは、日本人が「絶望する」ことが苦手だということです。より具体的に言えば、自己と日本人の存在理由を根源的に問うことができないということです。 今回は、この五木の指摘を踏まえて、「絶望」すべき理由とその意味について、より詳しく検討します。 さて、改めて確認し...
2020年10月12日
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五木寛之 「他力」(5)
近代の問題 今回は、再度筆者の仮説を説明して、五木寛之の議論を批判的に検討する視角を確認します。筆者の仮説とは、五木の論理に従えば、悪を自覚することまで「他力」にゆだねてしまうことになりかねないというものでした。要するに、「他力」思想には、罪の意識の弱さという問題があるということです。 この仮説を証明するべく、筆者は、五木の“論理的矛盾”を抽出してきました。その矛盾とは、〈...
2020年10月4日