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太宰治 福田恆存『芥川龍之介と太宰治』
今回は、福田恆存『芥川龍之介と太宰治』(講談社、2018年)を取り上げます。検討対象である福田の論考は、太宰治論なのですが、それは太宰本人と同時代に書かれたものです。それでは、福田はどのように太宰をみていたのでしょうか。 まず、以下の事実について確認しておきましょう。福田の最初の論考が発表されたのは、太宰が入水自殺をした1948年6月で、彼の死後に2本目が発表されました。当然ながら、福田の2つの...
2022年5月15日
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人生 五木寛之『無意味な人生など、ひとつもない』
今回は、五木寛之『無意味な人生など、ひとつもない』(PHP研究所、2017年)を取り上げます。私の問題関心に沿って、「生と死」に関する論点を整理していきます。すでに考察した通り、朝鮮半島からの引き揚げ経験を有する五木は、今日の自殺者の増加に警鐘を鳴らして、この問題に対してどのように取り組むべきかについて考えています。 五木によれば、自殺者の増加を抑えるためには、「死」に直面する経験をして、各自が...
2022年5月11日
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絶望 頭木弘樹『絶望名言 2』
今回は、頭木弘樹・NHK〈ラジオ深夜便〉制作班『NHKラジオ深夜便 絶望名言 2』(飛鳥新社、2019年)を取り上げます。先日、「中西哲也の書評」で、『絶望名言』を取り上げたのですが、絶望を表現にまで高めるには、おのれの「弱さ」や「悪」を自覚する必要があるという結論に至りました。今回は、この結論を踏まえて、「創造性」に関する論点を整理したいと思います。 まず、同書の中で、ディレクターが、次のよう...
2022年5月5日
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太宰治 細谷博『太宰治』
今回は、細谷博『太宰治』(岩波書店、1998年)を取り上げます。太宰治に関しては、このブログですでに考察してきましたが、彼の作品をどのように読むかについて、同書は興味深い視点を提供してくれています。それは、「大人の読み」です。私なりに説明すると、読者が自分の経験に照らして、太宰の作品を読むとき、自己をどのように意識するかということです。 細谷が指摘するように、太宰は、自分の経験を基にして作品を書...
2022年5月3日
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太宰治 加藤典洋『敗戦後論』
今回は、加藤典洋『敗戦後論』(筑摩書房、2015年)を取り上げます。加藤は、2019年に『太宰と井伏』を刊行していますが、1995年の「敗戦後論」の中で、すでに太宰治について言及していました。それでは、加藤は『太宰と井伏』で、本格的な太宰治論を展開して、太宰が自殺した原因について考える前に、この「敗戦後論」において、どのように太宰を位置づけていたのでしょうか。 簡潔に言えば、『敗戦後論』では、「...
2022年5月1日